準備体操やウォーミングアップなど。
アスリートなら当たり前に行っていますよね。
部活動やチームでは、メニューが与えられていますが「なんとなく」やってはいませんか。また、一人で練習をしている方ではウォーミングアップをなぜやるのか・どうやってやるのかなどが分からずにやってはいませんか。
今現在のスポーツ現場には、指導者がいない状況が多いです。
そこで選手だけではなく、指導者にも参考にして頂きたい内容をまとめてみました。
ウォーミングアップには、パフォーマンス向上やケガ予防の効果が期待できます。
他にも練習効果の質を高めるなど多くのメリットがあるとされています。
しかし、スポーツによってはウォーミングアップを短い時間(10~15分)で終わらせてしまう、意図を理解せずに流してやってしまうケースが多いと感じています。それと比べて陸上競技選手が行うウォーミングアップには個人差がありますが、約50~90分行います。
ここまでウォーミングアップに時間をかけて段階的に取り組む選手はあまり多くはないのかなと思います。そこで、陸上競技選手が行う「準備する力」を参考にしてみてください!
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【目次】
1.なぜウォーミングアップが必要なのか
2.ウォーミングアップの種類
3.ウォーミングアップの効果
4.ウォーミングアップを行わないリスク
5.ウォーミングアップの流れ
6.ウォーミングアップに行いたいスプリントトレーニング
7.ウォーミングアップの注意点
8.ウォーミングアップのポイント
9.まとめ
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なぜウォーミングアップが必要なのか
ウォーミングアップ(ウォームアップ)や準備体操などを行うのはなぜなのか。それについては以下の目的があります。
〇体調や状態のチェックをするため
ウォーミングアップ=体温を上げる と持っている方が多いかもしれませんが、他にも関節の動きやすさや筋肉の状態を確認する時間でもあります。また、その日の体調や身体が軽いのか重たいのかなどを確認することも重要です。
〇メニューの組み立てを行うため
ジャンプやランニングなどの様々な動きを行うことでその日のパフォーマンスを把握します。動作がいつもとギャップがある場合には練習メニューを変更する必要があります。普段行っている練習でも、その日の動作が悪い状態で行うと練習の質が下がるだけではなく、最悪の場合ではケガや体調不良に繋がる恐れがあります。
〇ただ準備するだけではなく強くなるため
強い選手になるためには、練習の効率を高めることが重要です。その為、ウォーミングアップや準備体操などの時間を「ただの準備する時間」という認識で行うのではなく、準備する時間も「強くなるための時間」にという考え方に変えて行いましょう。
ウォーミングアップの種類
ウォーミングアップの目的について考えが深まった後は、どんな内容のウォーミングアップを行っていくべきかを考えていきましょう。アプローチする方法はたくさんありますが、今回は一般的に行われている2種類のストレッチングを紹介いたします。
「スタティックストレッチング」
シンプルにまとめると、ゆっくりと行うストレッチングです。このストレッチでは、筋肉の柔軟性を高めたい場合や筋肉をじっくりと緊張をなくしていきたい時に行います。最近では、スタティックストレッチを行うことによってジャンプやスプリントなどのパワフルな動きのパフォーマンスを低下させるとも言われていますが、その条件として60秒以上のスタティックストレッチはパフォーマンスを損なうといった研究です。(kayら、2012)
他にも「伸張時間が6秒間では関節可動域は拡大しないものの筋出力は向上し,30秒間では関節可動域は拡大したものの筋出力は低下した。」といった研究もあります(谷沢ら、2014)
つまり、30秒間じっくり一部分を伸ばすと筋出力が低下しパフォーマンスを下げることにつながるものの、6秒間であればむしろパフォーマンス向上につながるということです。
「ダイナミックストレッチング」
シンプルにまとめると、反動や勢いを利用したストレッチングです。実際のスポーツ動作では勢いや反動を使った動きがメインとなるので、これらを考慮したやり方でもストレッチングをする必要があります。また、スタティックストレッチングと比べて、勢いを利用することによって関節をより動かすことができます。こちらは柔軟性だけではなく、可動性も同時に高めるアプローチです。
・柔軟性=筋肉の柔らかさ
・可動性=関節の動きやすさ
これらをまとめるとスタティックストレッチとダイナミックストレッチを組み合わせて行うことにより、パフォーマンスをさらに高めることが望めます!
※他にもPNFストレッチングやコンプレッションストレッチング、バリスティックストレッチングなど様々なアプローチがありますが、それらについてはまたの機会に紹介させて頂きます。
ウォーミングアップの流れ
一般的なウォーミングアップの流れとしては、有酸素運動(ジョギングなど)→体操→スタティックストレッチ→ダイナミックストレッチ→スプリントドリル(動き作りなど)→専門的ウォーミングアップ(スポーツの特性を考慮した内容)
このような流れになります。
しかし、その日の状態や目的によって順番を前後したい、内容を追加したりもします。
例えば、寒い時期ではジョギングをする前にホットパックやカイロで身体を温めたり、
試合が連続で続く場合は実施時間を短くしたりなど。
ウォーミングアップの効果
やり方や時間などによって得られる効果が変わってきますが、次の効果が期待できます。
① スムーズな筋力発揮
筋肉の温度が39.3度まで高まるとパワーが16%アップすると言われています
② カラダが動きやすくなる
柔軟性向上、筋肉の粘性減少、関節に潤滑液が分泌される
③ エネルギー効率が上がる
心拍数を一度高めると練習中の酸素摂取効率が向上
(20歳前後・健康を目的とした場合の方は心拍数を135拍程度まで高めてみましょう)
筋の作業効率、神経系機能の向上といった効果も期待できます
ウォーミングアップを行わないリスク
いきなり激しい運動を行ってしまうと急激な心拍数増加や血流促進が起きてしまう可能性があり、吐き気やたちくらみなどの体調を悪化させてしまう恐れがあります。また、せっかくの練習で得られる効果の質が低下してしまいます。準備するのが手間だと感じる方もいるかもしれませんが、十分なウォーミングアップを行うことを強く推奨します。
ウォーミングアップに行いたいスプリントトレーニング
それでは、実際にどのようなウォーミングアップを行えば良いのか。
今回は身体を目覚めさせるダイナミックストレッチと動きの質を高めるスプリントドリルについて紹介いたします。内容的には基礎的な種目にはなりますが、動きの基本を身に着けることはパフォーマンスアップやケガ予防のためにも重要です。それぞれ6種目、合計で12種目を参考に行ってみてください!
「ダイナミックストレッチ」
1 ふくらはぎのストレッチ
ふくらはぎ・アキレス腱のストレッチです。ふくらはぎは「第二の心臓」とも呼ばれるほど、血流を促進させるためにも重要な部位です。また、アキレス腱はバネのある走りをする為にもしっかりと伸ばしていきたいですね。
2 ハムストリングスのストレッチ
太ももの後ろ側のストレッチです。この筋肉は足が接地した瞬間に身体を前へ送り込んで走りの推進力を生みだすために重要な筋肉です。その為、しっかりとハムストリングスの機能を上げていく必要があります。また、陸上競技短距離で一番多いケガが「ハムストリングスの肉離れ」です。速く走るだけでなく、ケガを防ぐためにも行っていきましょう。
3 大腿四頭筋・腸腰筋のストレッチ
太ももの前側のストレッチです。太ももの前側にはいくつかの筋肉がありますが、その中の「腸腰筋」「大腿直筋」には、足(太もも)を高く上げる役割があります。この部位が硬くなってしまっていると、太ももが上がらずに効率の悪い走り(足が流れる)になってしまう可能性があります。また、効率の良い足の接地をする為にも重要な筋肉ですので、しっかりと伸ばしていきましょう。
4 股関節内旋・外旋ストレッチ
太ももの内側・外側のストレッチです。これらの筋肉がうまく使えないと、つま先の方向が外側や内側に向いてしまします。特に多いのが「ガニ股走り」の原因になってしまうことです。また、内側・外側の機能が低下してしまうと、太ももの前側(大腿四頭筋)や後ろ側(ハムストリングス)にある筋肉に負担をかけてしまいます。効率の良い走りを目指すためにも股関節は大きく動かせるようにしていきましょう。
5 股関節の屈曲ストレッチ
お尻の筋肉のストレッチです。また、太ももを高く上げるための股関節の機能を高めることが期待できます。太ももを高く上げる意識をしていても、この種目で高く上げることが出来なければ走る際にも高く上げることは難しいです。その為、こちらの種目で股関節周辺の筋肉を上手に使えるようにしていきましょう。
6 肩周辺のストレッチ
肩周りのストレッチです。陸上競技では股関節や骨盤に注目をしてしまいますが、それらをもっと上手に使うためには上半身との連動運動が大切です。特に肩回りの動きが硬いと、腕振りが小さくなってしまいます。腕振りが小さくて股関節が大きい動きで走るのは理論上難しいです。その為、下半身の柔軟性・可動性に負けないように上半身も同時にストレッチしていきましょう。
「動き作り」
1 オブリークジャンプ
地面に力を伝えることと、身体を自在にコントロールする運動です。ジャンプをする際は足が揃っていますが、宙に浮くときには片足だけ太ももを上げていきます。これをリズムよく交互に行い、腕の力も同時に使って前に進んでいきましょう。
2 コーディネーションドリル
肩回りの動きを大きくしながら、下半身と上半身を連動させる運動です。右腕は前まわし、左腕は後ろ回しでスキップをしていきます。複雑な動きのため、身体だけではなく脳を活性化させるためにもおすすめです。
3 シザースドリル
足の入れ替え動作を洗練させる運動です。速く走る為には、「前さばき」や「挟み込み」と言われる足の切り替えし動作が重要です。このドリルを行うことでスムーズな重心移動を身に付けることが期待できます。
4 ギャロッピング(ギャロップ)
馬の走り方を真似た運動です。走るリズムで片足だけ地面を強く押して前に進んでいきます。ここで大切なことはメリハリです。片足を強調して地面を押し、反対足では脱力して行っていきます。
5 ワンレッグジャンプ
片足ジャンプで前に進んでいく運動です。走りを分析していくと、片足ジャンプの連続だとわかります。その為、このジャンプ力(地面を押す力)を鍛えて筋肉を目覚めさせるために行っていきます。
6 バウンディング
片足ジャンプの交互で前に進んでいく運動です。ワンレッグジャンプで地面を押す力を身に付けた後は実際の走りに近づけるように、右→左→右→左のリズムで片足ジャンプをしていきます。運動内容としてエネルギーをとても使うため、多くやる必要はないですが身体を目覚めさせるためにも重要なスプリントドリルです。
ウォーミングアップのポイント
今回は合計で12種目のスプリントトレーニングを紹介いたしました。是非参考にして頂きたいのですが、毎日同じ内容のウォーミングアップはあまり推奨していません。
試合などではルーティンとして行う内容を決めておくのもよいですが、同じトレーニングをしているということは同じ効果しか得ることが望めません。その為、できるだけ様々な種目ややり方で行っていきましょう。多くの刺激を筋肉や動きに与えることで更にパフォーマンスアップを望むことができます。
まとめ
今回はウォーミングアップについて紹介させて頂きました。
これらはただ体温を温めるために行うのではなく、動きを洗練させパフォーマンスを高めるだけではなく、ケガを予防するためにも大切な行動です。
これからの練習に是非取り入れてみてください。
「準備する力」を身に着けてライバルに差をつけていきましょう!
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